見学まで来てもらい、応募にもつながった。ここまでの流れを作るのは簡単ではありません。

だからこそ、選考の段階で取りこぼしたくないところです。しかし医療・介護の現場では、選考の手順が昔のまま残っていることが少なくありません。

この記事では、書類の受け取り方から面接の組み立てまで、選考の設計を整理します。

応募書類は、応募者が楽な方法で

履歴書と職務経歴書を、負担の少ない形で

必要な書類は、履歴書と職務経歴書の2点で十分です。問題は受け取り方です。

パソコンで作成したものを、メールで送ってもらう形で構いません。 そう明記してください。

医療・介護では、いまだに「手書きの履歴書を郵送」を求める施設があります。しかしこれは、応募者にとって相当な負担です。

  • 履歴書用紙を買いに行く
  • 手書きで書く(書き損じたら最初から)
  • 証明写真を撮る
  • 封筒と切手を用意して投函する

この手間を越えられなかった人は、応募者数に現れません。 気づかないところで候補が減っています。

手書きの文字から人柄が分かる、という考え方もあります。ただ、それを確かめる代わりに応募が減ることが、いま自施設にとって得なのかどうか。そこは天秤にかけて判断してください。

書類で絞るのではなく、面接の材料にする

前の記事でも書いたとおり、医療・介護の多くの職種は働き手が選ぶ立場にあります。応募が殺到しているのでなければ、書類で候補を絞る場面は多くありません。

書類は「落とすためのもの」ではなく、面接で何を聞くかを決めるためのものと考えてください。職務経歴書を読み込んでおくと、面接の質問がまったく変わります。

面接官は2人がいい

1人でも3人以上でもなく、2人

2対1をおすすめします。理由は2つあります。

1人だと、観点が偏ります。 どんなに経験のある人でも、一人で見ると主観が入ります。後から「そんな印象だったか」と食い違うこともあります。

3人以上だと、応募者が萎縮します。 相手は緊張しています。並んだ面接官を前に本来の姿を出せる人は多くありません。見たいのは緊張した姿ではないはずです。

役割を分ける

2人にする最大の利点は、見る観点を分けられることです。

誰が 何を見るか
現場の責任者 スキル・経験。入職後に何をどこまで任せられるか
経営者・管理者 カルチャーフィット。この施設の考え方と合うか

この分担を、面接の前に口頭で確認しておいてください。 決めずに臨むと、2人とも同じことを聞いて終わります。

面接後の擦り合わせも早くなります。「スキルは問題ないが、進め方の考え方が合わなそう」といった具体的な議論ができるようになります。

面接も、相互判断の場です

見学の記事と同じことが、面接にも言えます。

応募者もまた、面接で施設を判断しています。 面接官の話し方、質問の内容、時間の使い方。そのすべてが「ここで働いたらどうなるか」の材料になります。

腕を組んで聞く、経歴の粗探しをする、施設側の説明をまったくしない——こうした面接を受けた人は、たとえ内定を出しても辞退します。選ぶ側であると同時に、選ばれる側でもあります。

質問は事前に用意し、1つ深掘りする

全員に同じ質問をする

聞くことをその場で考えると、人によって聞く内容が変わります。そうなると比較ができません。

主要な質問は事前に決めて、応募者全員に同じことを聞いてください。 5〜6問あれば十分です。

質問の内容は、求める人物像から逆算します。「協調性のある人が欲しい」のであれば、協調性が現れる場面を聞く質問を用意します。

回答に、もう1つ深掘りを重ねる

ここが最も効きます。用意された答えの、その先を聞いてください。

Q. 前職ではどんなことを大切にしていましたか
A. チームワークを大事にしていました

↓ ここで終わらない

Q. 具体的には、どんな場面でそう感じましたか
A. 夜勤帯で人手が足りないとき、自分の担当が終わっても
   他のフロアを手伝うようにしていました

1つ目の答えは、多くの人が準備してきます。しかし2つ目の答えは準備できません。 そこに実際の行動が出ます。

深掘りの質問は、難しく考える必要はありません。

  • 具体的には、どんな場面でしたか
  • そのとき、どう対応されましたか
  • 結果はどうなりましたか

この3つを覚えておけば足ります。

⚠️ 聞いてはいけないことがあります

ここは法令に関わる部分なので、正確に押さえてください。

厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、採用選考時に把握してはならない事項を示しています。

a. 本人に責任のない事項

  • 本籍・出生地に関すること
  • 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
  • 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類など)
  • 生活環境・家庭環境に関すること

b. 本来自由であるべき事項

  • 宗教、支持政党に関すること
  • 人生観、生活信条に関すること
  • 尊敬する人物に関すること
  • 思想に関すること
  • 労働組合や学生運動など社会運動に関すること
  • 購読新聞・雑誌・愛読書に関すること

c. 選考方法として不適切なもの

  • 身元調査などの実施
  • 本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
  • 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

医療・介護でありがちな質問

悪気なく聞かれてしまうのは、このあたりです。

つい聞いてしまう質問 なぜ問題か
ご結婚のご予定は 家庭環境に関すること。女性にのみ聞けば男女雇用機会均等法の観点でも問題
お子さんはいらっしゃいますか 同上
ご主人(奥様)のお仕事は 家族に関すること
ご実家はどちらですか 本籍・出生地に関すること
持ち家ですか、賃貸ですか 住宅状況に関すること

シフトが組めるかを知りたいという意図であれば、家庭の事情を聞くのではなく、「勤務可能な曜日・時間帯」を直接聞いてください。 知りたいのは勤務条件であって、家族構成ではないはずです。

面接官が複数いる場合は、事前にこの点を共有しておいてください。 経営者と現場責任者で認識がずれていると、片方が悪気なく聞いてしまいます。

結果は、できるだけ早く伝える

選考が長引くと辞退されます。医療・介護の求職者は、複数の施設を並行して受けていることが珍しくありません。

  • 結果連絡は当日〜3日以内を目安に
  • 採用の場合、条件は必ず書面で(給与、勤務時間、休日、雇用形態、試用期間の有無)
  • 迷っている様子であれば、もう一度見学に来てもらう、現場の職員と話す機会をつくるといった選択肢を示す

条件を口頭だけで伝えると、入職後に「聞いていた話と違う」が起きます。書面にすることは、施設を守ることにもなります。

設計は「どんな人が欲しいか」で変わる

最後に、大切なことを書いておきます。

ここまで書いてきたのはであって、正解ではありません。どんな人に来てほしいかによって、選考の設計は変わります。

  • 即戦力を求めるなら、スキルの確認に時間を割く必要があります
  • 未経験者を育てる前提なら、スキルより学ぶ姿勢や続けられそうかを見ます
  • 少人数の職場なら、カルチャーフィットの比重が上がります

つまり、選考を設計する前に「誰に来てほしいか」が決まっていなければなりません。

それが決まっていないまま面接をすると、面接官によって評価がばらつきます。「いい人だった」「うちには合わない気がする」といった感想が並ぶだけで、判断の根拠が共有されません。

来てほしい人物像の決め方は、求人票を書く前に確認したい3つのこと自施設の魅力を見つける10の質問にまとめています。選考の設計は、そこから逆算してください。

まとめ

  1. 応募書類は応募者が楽な方法で — PC作成・メール送信で構わないと明記する
  2. 書類は絞るためではなく、面接の材料 — 読み込んでおくと質問が変わる
  3. 面接官は2人 — 現場責任者がスキル、経営者がカルチャーフィット。役割を事前に分ける
  4. 面接も相互判断の場 — 応募者もこちらを見ている
  5. 質問は事前に用意し、1つ深掘りする — 準備できない2つ目の答えに、実際の行動が出る
  6. 聞いてはいけない事項がある — 本籍・家族・住宅・思想など。面接官全員で事前に共有する
  7. 結果は早く、条件は書面で
  8. 設計は「誰に来てほしいか」から逆算する — 型をなぞるだけでは機能しない

採用が決まったあとの受け入れについては、入職後に辞めさせない受け入れ設計にまとめました。

Sources