前の記事で、求人票を書く前にまず3つのメリットを見つけてくださいと書きました。
しかし実際にやってみると、多くの方がここで止まります。「うちには特別なことは何もない」「他の施設と同じだと思う」——そう感じるのは、めずらしいことではありません。
自分たちの魅力は、内側にいるほど見えなくなります。毎日そこにあるものは、当たり前になって意識に上らなくなるからです。魅力がないのではなく、気づけない状態にあるだけです。
この記事では、その魅力を掘り起こすための10の質問をご紹介します。前半5問は職員に聞く質問、後半5問は経営者・管理者がご自身に問う質問です。
進め方
はじめに、やり方だけ確認しておきます。
- 一度に全部やらない。 職員1人あたり15分程度、3人ほどに聞ければ十分です
- 相手の言葉のまま書き留める。 ここが最も大切です。要約したり整理したりせず、話された言葉をそのまま残してください
- 抽象的な言葉が出たら、必ず掘る。「アットホーム」「風通しが良い」と言われたら、「たとえばどんなときにそう感じますか」と一度返してください
3つ目が、この作業の成否を分けます。抽象語のままメモすると、求人票も抽象的になります。具体的な場面まで聞けていれば、そのまま求人票に書けます。
A. 職員に聞く5つの質問
質問1|ここで働き続けている理由は何ですか
最も基本的な質問です。「なぜ入ったか」ではなく「なぜ続けているか」を聞くのがポイントです。
入職の理由は「家から近かった」「たまたま募集していた」で終わることが多いのですが、続けている理由には、その施設で実際に得られているものが表れます。
使い方:複数の職員から同じ答えが出たら、それが自施設の中核的な魅力です。
質問2|前の職場と比べて、良いと感じるのはどんなところですか
比較があると、答えが具体的になります。中途入職者が多い医療・介護では特に有効です。
「前は記録を持ち帰っていたが、ここは時間内に終わる」「前より人が多いので急な休みを言い出しやすい」——こうした答えは、他施設との違いがそのまま言葉になっている状態です。求人票に使いやすい素材です。
質問3|友人がこの仕事を探していたら、どこを勧めますか
視点を「自分」から「他人に勧める立場」に変える質問です。人に勧めるつもりで考えると、普段は言葉にしない部分が出てきます。
答えにくそうであれば、「逆に、どんな人には向かないと思いますか」と続けてください。向かない人が分かると、向く人も見えてきます。
質問4|入職して最初の1か月で「思っていたより良かった」ことは何ですか
入る前の期待と、入った後の実感のギャップを聞く質問です。
ここで出てくる答えは、求人票に書けていなかったことそのものです。「思っていたより教えてもらえた」「思ったより人間関係が良かった」——それが伝わっていれば、応募はもっと増えていたはずです。
使い方:この答えは求人票の「求人に関する特記事項」に、そのまま書ける素材になります。
質問5|忙しい日でも「今日は来てよかった」と思う瞬間はどんなときですか
条件面ではなく、仕事のやりがいを引き出す質問です。
医療・介護は、給与や休日だけで職場を選ぶ人ばかりではありません。この仕事を続けたいと思っている人に届く言葉は、ここから出てきます。
B. 経営者・管理者が自分に問う5つの質問
質問6|直近1年で辞めた人と、辞めなかった人の違いは何でしたか
つらい質問ですが、最も情報量があります。
辞めなかった人に共通するものが、自施設に合う人の条件です。逆に辞めた人に共通するものは、求人票の段階で伝えておくべきだったことです。
「夜勤の負担を想像していなかった人が辞めている」のであれば、夜勤の実態を先に書くべきです。短期的には応募が減るかもしれませんが、入職後に辞める人が減ります。
質問7|今いる職員に共通する特徴は何ですか
年齢層、経験、家庭の状況、前職の業種。事実として並べてみてください。
「子育て中の職員が多い」のであれば、そう書けます。「未経験から入った人が4人いる」のであれば、それは未経験者にとって強い安心材料です。
今いる人が、これから来る人の判断材料になります。
質問8|他の施設ではやっていないが、うちではやっていることは何ですか
小さなことで構いません。むしろ小さなことのほうが具体的です。
- 申し送りの方法
- シフトの決め方
- 新人が最初に担当する業務の決め方
- 記録の書き方や締め切りの扱い
「そんなことは当たり前では」と思うものほど、実は施設ごとに違います。当たり前だと思っていることこそ確認してください。
質問9|お金をかけずに続けている取り組みは何ですか
続いているものは本物です。予算をつけた制度は止まりますが、費用がかからないのに続いていることは、その施設に根づいた文化です。
月1回の面談、誕生日の声かけ、休憩室の使い方——何年も続いているなら、それは他施設が真似しにくい魅力です。
質問10|うちの弱みを3つ挙げるとしたら。それを喜ぶ人はどんな人ですか
最後は反転の質問です。
前の記事でも書いたとおり、メリットは事実そのものではなく、事実の見え方です。弱みだと思っていることが、ある人にとっては選ぶ理由になります。
| 弱みだと思っていること | 喜ぶ人 |
|---|---|
| 夜勤が多い | 短い出勤日数でしっかり稼ぎたい人 |
| 土日もシフトに入る | 平日に自分の時間を取りたい人 |
| 施設が小さい・職員が少ない | 大人数の中で埋もれたくない人 |
| 設備が新しくない | 人の手で丁寧に関わりたい人 |
| 業務の幅が広い | 一つの作業だけを繰り返したくない人 |
隠す必要はありません。先に書いておくほうが、入職後のミスマッチを防げます。
10問終わったら
繰り返し出てきたものを拾う
複数の人から同じ答えが出たものに印をつけてください。それが自施設の魅力です。
1人しか言っていないことは、その人個人の事情である可能性があります。3人中2人以上が触れたものを候補にすると、外しにくくなります。
3つに絞る
候補が10個あっても、求人票には書ききれません。次の基準で3つに絞ってください。
- 事実として言い切れるか — 誇張が必要なものは外す
- 具体的な場面を添えられるか — 抽象語のままのものは外す
- 来てほしい人が喜ぶか — 誰に向けるかを決めてから選ぶ
3つ目の基準を使うには、来てほしい人を先に決める必要があります。その手順は求人票を書く前に確認したい3つのことで説明しています。
求人票のどこに置くか
3つ決まったら、配置します。
| 順位 | 置き場所 |
|---|---|
| 最も強い1つ | 職種名(28文字)の中 |
| 2番目 | 仕事の内容の冒頭3行 |
| 3番目 | 事業内容・会社の特長(各90文字) |
| すべての詳細 | 求人に関する特記事項(600文字) |
各欄の書き方はハローワーク求人票の書き方にまとめています。
よくある失敗
経営者だけで考えてしまう。 経営者が思う魅力と、現場が実感している魅力はずれます。両方を聞いてはじめて、書いても嘘にならない言葉になります。
良いことしか拾わない。 質問10を飛ばすと、どこの施設にも書ける当たり障りのない求人票になります。弱みを扱えるかどうかで差がつきます。
抽象語のままメモする。「アットホーム」と書き留めても使えません。「たとえばどんなとき」を必ず聞いてください。ここを省くと、10問やっても求人票は変わりません。
一度で終わらせる。 職員が入れ替われば魅力も変わります。年に1回は聞き直してください。新しく入った人には質問4が特に有効です。
まとめ
10の質問を再掲します。
職員に聞く
- ここで働き続けている理由は何ですか
- 前の職場と比べて、良いと感じるのはどんなところですか
- 友人がこの仕事を探していたら、どこを勧めますか
- 入職して最初の1か月で「思っていたより良かった」ことは何ですか
- 忙しい日でも「今日は来てよかった」と思う瞬間はどんなときですか
自分に問う
- 直近1年で辞めた人と、辞めなかった人の違いは何でしたか
- 今いる職員に共通する特徴は何ですか
- 他の施設ではやっていないが、うちではやっていることは何ですか
- お金をかけずに続けている取り組みは何ですか
- うちの弱みを3つ挙げるとしたら。それを喜ぶ人はどんな人ですか
所要時間は、職員3人に聞いて1時間ほど。ご自身への5問を含めても半日はかかりません。
求人広告に予算をかける前に、この半日を使ってみてください。書くことが決まっていない求人票にいくら払っても、応募は増えません。