応募が来ないとき、多くの施設が最初にするのは求人票の書き直しです。表現を変え、写真を入れ替え、キャッチコピーをひねってみる。
ところが、それで応募が増えることはあまり多くありません。理由は単純で、何を伝えるかが決まらないまま、伝え方だけを変えているからです。
求人票の出来は、書く作業よりも、書く前の準備でほとんど決まります。ここでは求人票に取りかかる前に確認しておきたい3つのことをご紹介します。
1. ここで働くメリットを3つ見つける
はじめに、自施設で働くメリットを3つ挙げてみてください。
すぐに3つ出てきたでしょうか。もし手が止まったとしても、それは珍しいことではありません。むしろ多くの施設がここで止まります。そして、ここが止まったまま求人票を書くから、条件だけが並んだ求人票ができあがります。
自分たちの魅力は、内側にいるほど見えなくなります。毎日そこにあるものは、当たり前になって意識に上らなくなるからです。
経営者だけで考えず、職員に聞く
魅力を探すときは、経営者や採用担当だけで考えないでください。実際に働いている職員に聞くのが確実です。
聞き方は難しく考えなくて構いません。
- ここで働き続けている理由は何ですか
- 前の職場と比べて、良いと感じるのはどんなところですか
- 友人がこの仕事を探していたら、どこを勧めますか
3つ目の質問は特に有効です。「人に勧めるとしたら」と視点を変えると、普段は言葉にしない部分が出てきます。
何人かに聞いてみると、同じ答えが繰り返し出てくることがあります。それが自施設の魅力です。
聞き方をもっと詳しく知りたい場合は、自施設の魅力を見つける10の質問にまとめています。職員に聞く5問と、経営者がご自身に問う5問です。
メリットを引き出す6つの切り口
何も浮かばないときは、次の切り口から探してみてください。
| 切り口 | 例 |
|---|---|
| お金 | 給与水準が高い / 夜勤が多い分しっかり稼げる / がんばった分だけ昇給しやすい |
| 休み | 休みが多い / 急な休みが取りやすい / 土日休み / シフトの柔軟性が高い |
| 働き方 | フレキシブルな働き方ができる / 服装が自由 |
| 成長 | 技術が身につく / 研修が充実している / 未経験でも働きやすい |
| 人間関係 | 人間関係が良い / 相談しやすい雰囲気がある |
| 通いやすさ | アクセスが良い / 駐車場がある |
すべてを埋める必要はありません。自信を持って言えるものを3つ選べば十分です。
同じ事実でも、見方を変えるとメリットになる
ここが最も大切な点です。
「夜勤が多い」——これは一見すると弱みです。しかし言い方を変えると「夜勤が多い分、しっかり稼げる」になります。
「土日もシフトに入る」——これも弱みに見えます。ですが「土日シフトの分、平日に自分の時間が取れる」と言い換えられます。平日に役所や病院に行きたい人、混雑を避けて出かけたい人にとっては、むしろ魅力です。
メリットは事実そのものではなく、事実の見え方です。弱みだと思って隠していたことが、ある人にとっては選ぶ理由になります。
自施設の「書きにくいこと」を一度並べて、それが誰にとって都合が良いかを考えてみてください。隠すべき欠点だと思っていたものが、他にはない魅力に変わることがあります。
2. そのメリットが「誰にとって」魅力かを決める
3つのメリットが出たら、次はそれが誰にとっての魅力なのかを決めます。
求人票が失敗する典型は、全員に向けて書いてしまうことです。誰にでも当てはまるように書くと、結局は誰の心にも残りません。条件を並べただけの求人票になるのは、たいていこれが原因です。
先ほどの例で考えてみます。
- 「夜勤が多い分、しっかり稼げる」→ 今しっかり稼ぎたい人に響く
- 「土日シフトだが、平日に自分の時間が取れる」→ 平日に動きたい人に響く
- 「未経験でも働きやすい」→ これから資格を取りたい人、別業種から移りたい人に響く
同じ施設でも、押し出すメリットによって来る人が変わります。逆に言えば、来てほしい人を決めないと、押し出すメリットも決まりません。
人物像は、メリットから逆算する
「どんな人に来てほしいか」を先に考えると、たいてい「まじめで責任感があって長く働いてくれる人」といった、どこの施設でも同じ答えになります。
そうではなく、選んだ3つのメリットを喜ぶのはどんな人か、という順番で考えてください。
- 年齢や経験だけでなく、どんな生活をしている人か
- 前の職場で何に困っていた人か
- 何を優先して職場を選ぶ人か
ここまで具体的になると、求人票に書くべき言葉が自然に決まります。媒体をどこにするかも、この段階ではじめて判断できます。
3. 今の求人票に、それが書いてあるか確認する
最後に、現在出している求人票を開いてください。1と2で整理した内容が、実際に書かれているでしょうか。
多くの場合、書かれていません。書かれていても、給与や勤務時間の条件が延々と続いた後、最後の備考欄に一行だけ、ということがよくあります。求職者はそこまで読みません。
確認するポイント
- 3つのメリットが、求人票のなかに入っているか
- そのうち少なくとも1つが、冒頭に書かれているか
- 来てほしい人が読んで「自分のことだ」と感じる言葉があるか
- 施設側の都合ではなく、働く人から見た書き方になっているか
- 抽象的な言葉(アットホーム、風通しが良い)で終わらず、具体的な場面が書かれているか
最後の項目は特に見落とされます。「アットホームな職場です」と書かれていても、求職者には何も伝わりません。どんな場面でそう感じるのかまで書いて、はじめて伝わります。
まとめ
求人票を書く前に確認したいのは、次の3つです。
- ここで働くメリットを3つ見つける — 職員に聞く。弱みも、見方を変えればメリットになる
- そのメリットが誰にとって魅力かを決める — 全員に向けて書かない
- 今の求人票にそれが書いてあるか確認する — 特に冒頭に入っているか
書き方のテクニックは、この3つが決まった後で効いてきます。順番を逆にすると、いくら表現を磨いても応募は増えません。
まずは職員数人に「ここで働き続けている理由」を聞くところから始めてみてください。それだけでも、これまで気づかなかった魅力が見つかるはずです。