ハローワークは費用がかかりません。そのぶん「とりあえず出しておくもの」として扱われがちです。
しかし医療・介護の現場では、今も主要な応募経路のひとつです。そして無料であるがゆえに、出しただけで手が止まっている求人票がとても多い。裏を返せば、きちんと書くだけで周囲と差がつきます。
この記事では、どの欄に何を書くかを整理します。なお「そもそも何を伝えるか」が決まっていない場合は、先に求人票を書く前に確認したい3つのことをお読みください。ここから先は、伝えたいことが決まっている前提で進めます。
まず、文字数の上限を知る
ハローワークの求人票は、項目ごとに書ける文字数が決まっています。主なものは次のとおりです。
| 項目 | 文字数 |
|---|---|
| 職種 | 28文字 |
| 仕事の内容 | 360文字(30字×12行) |
| 求人に関する特記事項 | 600文字(30字×20行) |
| 就業時間に関する特記事項 | 120文字 |
| 事業内容 | 90文字 |
| 会社の特長 | 90文字 |
| 休日等(その他) | 60文字 |
注意点が2つあります。
- 記号や空白も1文字として数えられます
- 入力はすべて全角換算です
そして最も大切な点ですが、多くの求人票は、この上限の半分も使っていません。書ける場所があるのに空いている、という状態です。ここから見ていきます。
1. 職種(28文字)— 検索にひっかかる入口
求職者はまず職種名で検索し、一覧から気になったものを開きます。つまり職種欄は、読まれるかどうかを決める入口です。
ここが「看護師」の4文字だけで終わっている求人票は少なくありません。同じ地域の他施設も同じ4文字なので、並んだときに選ぶ理由がありません。
28文字あります。職種名に加えて、条件や特徴をあと1〜2つ入れてください。
✗ 看護師
○ 看護師/日勤のみ・残業ほぼなし・ブランク可
○ 介護職員/夜勤あり・月8~9日休み・未経験歓迎
入れる要素は、前の記事で洗い出した3つのメリットから選びます。そのうち最も強いものを1つ、ここに置くイメージです。
ただし、事実と違うことは書けません。誇張した表現はハローワーク側で修正を求められますし、そもそも入職後のミスマッチにつながります。書けるのは実際にそうであることだけです。
なお「日勤のみ」と「夜勤あり」の両方を募集していると、28文字にどちらも入れることになり、結局どちらも弱くなります。この場合はそもそも求人を分けるという方法があります。記事の後半で扱います。
2. 仕事の内容(360文字)— 冒頭3行が勝負
この欄は360文字書けますが、一覧画面では冒頭しか表示されません。全部読んでもらえる前提で書くと、いちばん伝えたいことが埋もれます。
構成はこう考えてください。
- 冒頭3行(約90文字)……誰に向けた仕事か、いちばんのメリット
- 中盤……具体的な業務内容
- 後半……1日の流れ、配属先の体制
多くの求人票は、この順番が逆になっています。「利用者様の身体介護、生活援助、記録業務……」と業務の羅列から始まると、読み手は他施設との違いを感じられません。
✗ 利用者様の身体介護、生活援助、レクリエーション、記録業務等を
行っていただきます。
○ 「日勤だけで働きたい」という方に向けた募集です。夜勤はありません。
入職後3か月は先輩職員が同行し、一人で対応いただくことはありません。
未経験からの入職者が現在4名在籍しています。
【業務内容】身体介護、生活援助、レクリエーション、記録業務 ほか
業務の羅列を消す必要はありません。順番を入れ替えるだけです。それだけで、冒頭に表示される内容が変わります。
3. 求人に関する特記事項(600文字)— 最大の欄
求人票のなかで最も文字数が多いのがこの欄です。600文字、原稿用紙で1枚半あります。
そして、最も空欄が多いのもこの欄です。「特記事項」という名前のせいか、特別なことがなければ書かなくてよいと思われがちですが、実際には最大の自由記述欄です。
求人者マイページでは「求人条件に関する特記事項」と表示されることがあります。同じ欄です。
ここに、前の記事で見つけた3つのメリットを展開します。書く内容の例を挙げます。
具体的な場面を書く
「アットホームな職場です」「風通しが良い職場です」——こうした言葉は、どの施設の求人票にも書かれています。読み手には何も伝わりません。
そうではなく、そう感じられる場面を書いてください。
✗ アットホームな職場です。
○ 休憩室が広く、休憩時間が重なった職員同士で話せる環境です。
月1回のミーティングでは、職員から出た意見をもとに
シフトの組み方を変えたこともあります。
書きやすい題材
何を書けばよいか迷ったら、次のあたりから選んでください。
- 1日の流れ——始業から終業までを時間ごとに
- 教育体制——入職後どのくらいの期間、誰がどう教えるか
- 職員構成——年代、男女比、未経験入職者の人数
- 休みの取り方の実際——希望はどのくらい通るか、連休は取れるか
- 入職した人の言葉——なぜここを選んだか
数字が入るものは特に具体性が出ます。「教育体制が充実」より「入職後3か月は先輩が同行」のほうが、読み手は自分の姿を想像できます。
4. 事業内容・会社の特長(各90文字)— 捨てない
この2つは各90文字と短いため、後回しにされがちです。しかし空欄と90文字では印象が大きく違います。
- 事業内容……何をしている施設か。定員、診療科、サービスの種類など
- 会社の特長……ここで働く理由になる部分
90文字は、だいたい2〜3文です。3つのメリットのうち、職種欄と仕事の内容に入れられなかったものを、ここに置いてください。
5. 出すタイミングと、更新
求人票は出して終わりではありません。掲載期間の仕組みを知っておくと、無駄が減ります。
有効期限は「受理日の属する月の翌々月末」
ここに実務上のコツがあります。8月1日に出しても8月31日に出しても、期限は同じ10月末です。つまり、
月末に出すと、掲載期間が約1か月短くなります。
出すタイミングを選べるなら、月初に出すほうが得です。同じ手間で掲載期間が変わります。
更新は1か月の延長が1度だけ
期限後も募集を続ける場合は更新手続きが必要です。求人者マイページから1か月の延長ができますが、延長できるのは一度だけです。有効期間が終わる前に更新の予約もできます(紹介期限月の21日以降)。
期限を過ぎると自動的に非公開になるため、募集を続けるつもりなら期限前に手続きを済ませてください。
延長ではなく、書き直して出し直す
ここが実務では大切な部分です。
期限が来たとき、同じ内容のまま延長するのは簡単です。しかしその求人票は、すでに2か月間、応募が来なかった内容です。同じものを延長しても結果は変わりにくいでしょう。
期限は、書き直すきっかけとして使ってください。
- 冒頭に置いたメリットを別のものに差し替えてみる
- 職種欄の条件表記を変えてみる
- 特記事項に、前回書かなかった題材を足す
一度に全部変えると何が効いたのか分からなくなるので、変えるのは1〜2か所にとどめるのがおすすめです。
もう1つの工夫|働き方が複数あるなら、求人を分ける
ここまでは1枚の求人票をどう書くかという話でした。最後に、そもそも何枚出すかという話をします。
同じ職種でも複数の働き方で募集しているなら、1枚にまとめず、分けて出すことを検討してください。
1枚にまとめると、どちらにも刺さらない
たとえば看護師を「日勤のみ」と「夜勤あり」の両方で募集しているとします。これを1枚で出すと、こうなりがちです。
✗ 職種:看護師(日勤のみ・夜勤ありどちらも相談可)
仕事の内容:
日勤のみの勤務も、夜勤ありの勤務も可能です。
ご希望に応じて相談させていただきます。
一見すると親切ですが、読み手の立場では自分向けの求人だと感じられません。
- 日勤で働きたい人……「夜勤もあるのか」と身構える
- 夜勤で稼ぎたい人……「夜勤がどれくらいあるのか」が分からない
前の記事で、メリットは誰にとっての魅力かを決めると書きました。来てほしい人が2種類いるなら、求人票も2枚必要です。1枚に押し込むと、どちらにも中途半端になります。
分けると、それぞれ最適化できる
○ 求人A
職種:看護師/日勤のみ・残業ほぼなし・ブランク可
冒頭:「家庭と両立しながら働きたい」方に向けた募集です。
○ 求人B
職種:看護師/夜勤専従も可・夜勤手当◯◯円・高収入
冒頭:「短い出勤日数でしっかり稼ぎたい」方に向けた募集です。
分けることで得られるものは3つあります。
- 職種欄(28文字)をそれぞれ使い切れる——条件を1つに絞れるので表現が具体的になる
- 仕事の内容の冒頭3行を、それぞれの相手に向けて書ける——「あなたのための募集です」と言い切れる
- 検索結果に複数表示される——求職者の目に触れる機会がそのぶん増える
3つ目は見落とされがちですが、地味に効きます。同じ地域で看護師を探している人の一覧に、自施設が2回出てくることになります。
分ける基準
働き方の違いが、次のどれかに当てはまるなら分ける価値があります。
| 基準 | 例 |
|---|---|
| 勤務時間帯 | 日勤のみ / 夜勤あり / 夜勤専従 |
| 雇用形態 | 正職員 / パート・アルバイト |
| 経験 | 未経験・ブランク可 / 経験者・リーダー候補 |
| 勤務地 | 複数の事業所がある場合は事業所ごと |
医療・介護は同じ資格でも働き方の幅が広い業種です。分けられる余地は、思っているより大きいはずです。
分けるときの注意点
内容をコピーしない。 職種名だけ変えて中身が同じでは、分けた意味がありません。少なくとも職種欄と、仕事の内容の冒頭3行は必ず書き分けてください。ここが同じなら1枚にまとめたほうがましです。
実際に採用する予定のない求人は出さない。 露出を増やす目的だけで枠を作るのは適切ではありませんし、応募が来ても対応できません。
更新の手間は本数分かかります。 5本出せば5本を管理することになります。まずは2本から始めて、反応の違いを見るのがおすすめです。
分けた結果、どちらの求人に応募が集まったかは、そのままどんな人が自施設に関心を持つかというデータになります。次の募集の判断材料としても使えます。
なお、こうして分けて作った原稿は、そのままIndeedの無料掲載でも使えます。手順はIndeedに出しても応募が来ない|無料掲載を活かす運用のコツにまとめました。
書く前の注意点
最後に、これだけは守ってください。
事実と違うことは書かない。
条件を良く見せれば応募は増えるかもしれません。しかし入職後に「聞いていた話と違う」となれば、早期離職につながります。採用にかけた時間も費用も無駄になり、その職員が現場に与える影響も残ります。
弱みを隠す必要もありません。前の記事でも触れたとおり、弱みは見方を変えるとメリットになります。夜勤が多いことも、土日にシフトが入ることも、それを望む人にとっては選ぶ理由です。
まとめ
ハローワーク求人票で押さえたい5つの欄は次のとおりです。
- 職種(28文字)——最も強いメリットを1つ入れる。ここが検索の入口
- 仕事の内容(360文字)——冒頭3行に「誰に向けた仕事か」を置く。業務の羅列は後ろへ
- 求人に関する特記事項(600文字)——最大の欄。抽象語ではなく具体的な場面を書く
- 事業内容・会社の特長(各90文字)——短くても空欄にしない
- タイミングと更新——月初に出す。延長ではなく書き直して出し直す
そしてもう1つ、
- 働き方が複数あるなら、求人を分ける——来てほしい人が2種類いるなら、求人票も2枚
どれも費用はかかりません。かかるのは、書くための時間だけです。
まずは現在出している求人票を開いて、各欄が何文字埋まっているかを数えてみてください。上限の半分も使っていない欄が見つかるはずです。そこが、いちばん伸びしろのある場所です。